「白神の森乳酸菌は、昨今話題の「脳腸相関」にも深く関わるのです」
柴田学園大学・奥野海良人准教授
私の出身地は和歌山県で、そこには和歌山県立医科大学という公立大学があります。その大学の初代学長がかの有名な古武弥四郎先生であり、この古武弥四郎先生の研究していた内容がアミノ酸の一種であるトリプトファンの代謝物「キヌレニン」についてです。
このキヌレニンが発見されて間も無く100年が経とうとしていますが、これまでにキヌレニンの代謝物が次々と発見されて、それらの機能性も明らかとなってきました。しかしながら未だにヒトの健康とトリプトファン代謝についての新知見は尽きることなく発見されている状況で、決着には至っておりません。偶然ではありますが、私もこのトリプトファン‐キヌレニンの研究に携わっており、自らの誇りに感じています。
近年アルツハイマー病、うつ病、統合失調症といった脳神経疾患は日本のみならず、高齢化の進むほとんどの国では社会問題となっていますが、これらの疾患の一要因として脳内で生成されるキヌレニンおよびその代謝物が関連していると考えられています。このような中で私は小腸を介して脳内のキヌレニン代謝に影響を及ぼすのではないかと考え、研究を進めています。
キヌレニンを合成する上で重要な酵素は大別すると2種類あり、それぞれIDOとTDOと呼ばれ、IDOは免疫細胞、TDOは肝臓に局在しています。小腸には全身の免疫細胞の70%以上が集中し、免疫細胞の成熟に深く関与しており、摂取された乳酸菌を含む食品および腸内細菌とは相互に作用することが知られています。そして小腸と肝臓は門脈を介して血液的につながっており、全身のトリプトファンとキヌレニンの濃度を一定に保つように調節しているようです。
実際これまでの研究で「白神の森乳酸菌」(特にキハダ由来のL8株)の死菌体の摂取は生体のトリプトファン代謝に影響を与えることが観察されており、今後はその影響と機構についてさらに詳しく解析していく予定です。
本研究によって、「白神の森乳酸菌」がトリプトファン代謝を通じて脳機能維持に貢献することが明らかとなり、広く利用されるようになって人々の健康と幸福に資することができればと思っています。
「白神の森乳酸菌」は弘前大学で単離されて以来、これまでに研究開発と利用が検討されてきました。これまで行ってきた近似する乳酸菌株の研究結果等から考えると、この素材の可能性は現状確認されている機能性だけにとどまらない可能性が高く、より多くの角度から機能性研究を進めることと、その機能性を発揮する上での基礎的なメカニズムを明らかにしていくことが重要だと感じています。そのためにも弘前市を中心として「白神の森乳酸菌」に関する研究の輪がより大きく広がっていくことを願っています。
柴田学園大学
生活創生学部
健康栄養学科
奥野 海良人 准教授